ICT支援員が校内FAQをGeminiの「Gem」にしてみた
2026年10月30日
はじめに:毎日届く「同じ質問」
校内のよくある質問を、Geminiの「Gem」という機能で「質問受付係」にしてみました。この記事では、ICT支援員の私が実際に作った手順を紹介します。
ICT支援員をしていると、同じ質問が何度も届きます。
- 「Chromebook(iPad)がWi-Fiにつながりません」
- 「子どものパスワードを忘れたと言われました」
- 「Classroomで課題を返却するには?」
どれも大切な質問ですが、私が学校にいない日には先生が困ったまま授業を迎えることになります。そこで「マニュアルを読んで答えてくれる質問係」をGeminiで作ってみました。
なぜGeminiを選んだのか
理由は「新しく導入しなくてよい」からです。学校で使うツールは、性能よりも「許可が出ているか」で使えるかどうかが決まります。
- すでに導入されている:GIGAスクール構想でGoogle Workspace for Educationを使っている自治体では、追加の契約なしでGeminiを使える場合があります。
- 教育向けのデータ保護:学校のアカウントで使うGeminiは、教育機関向けの利用規約のもとで動きます。管理職に説明するときの安心材料になります。
- 先生がいつものアカウントで使える:新しいIDやアプリを覚える必要がありません。
※ Geminiや共有機能が使えるかどうかは、教育委員会(管理者)の設定で決まります。使えない場合は、まず自治体の指針を確認してください。
GemとNotebookLMの使い分け
会話で手順を案内したいならGem、答えの根拠を示したいならNotebookLMが向いています。今回は「先生が気軽に聞けること」を優先してGemを選びました。
| Gem | NotebookLM | |
|---|---|---|
| 得意なこと | 会話しながら一歩ずつ案内する | 資料のどこに書いてあるかを示して答える |
| 設定するもの | 指示文+参考資料 | 資料(ソース) |
| 向いている場面 | トラブル対応、操作の質問 | 規定や通知の確認 |
| 注意点 | 資料にないことも答えようとするので、指示文で止める | 会話の自由度は低め |
ちなみに、最近は「AIエージェント」という言葉をよく耳にします。厳密には、エージェントは自分でツールを使い、判断を繰り返すものです。Gemはそこまではしませんが、「資料を読んで答える」というエージェントの土台を、プログラミングなしで体験できます。
作り方①:FAQ資料を用意する
Gemの回答の質は、指示文よりも参考資料の書き方で大きく変わります。私が意識したのは次の4点です。
- 1トピック=1見出し:「Wi-Fi」「パスワード」のように分ける
- よくある言い方を書き添える:「つながらない」「ネットが切れる」など
- 手順は番号付きで短く:1ステップ=1操作
- 自分で解決しないことを明記する:「ここから先はICT支援員へ」
以下はサンプルです(架空の学校を想定しています)。Googleドキュメントにそのまま貼り付けて使えます。
# さくら小学校 ICTよくある質問(第1版)
## Q1. 端末がWi-Fiにつながらない
よくある言い方:ネットが切れる、ページが開かない、「オフライン」と出る
1. 画面右下のWi-Fiマークを確認する
2. Wi-Fiを一度オフにして、10秒後にオンにする
3. それでもだめなら端末を再起動する
4. クラスの複数台で同じ症状なら、教室のアクセスポイントの問題の可能性あり
→ 4の場合はICT支援員または情報担当の先生に連絡
## Q2. 子どもがパスワードを忘れた
よくある言い方:ログインできない、パスワードが違うと出る
1. 学校で配布した「アカウントカード」を確認する
2. 大文字・小文字、全角・半角の入力ミスがないか確認する
3. それでもだめなら、リセットは管理者だけが行える
→ 学年・クラス・出席番号を伝えて、情報担当の先生に依頼
(※パスワードそのものはGemに入力しない)
## Q3. Classroomで課題を返却したい
よくある言い方:採点したい、戻したい、返したい
1. Classroomでクラスを開き、「授業」タブから課題を選ぶ
2. 「課題を表示」を押す
3. 返却する子どもにチェックを入れ、「返却」を押す
## Q4. 電子黒板に画面が映らない
よくある言い方:テレビに出ない、投影できない、ミラーリングできない
1. 電子黒板の入力切替を確認する(HDMI1・HDMI2など)
2. ケーブルを抸き差しする
3. 無線の場合は、端末と電子黒板が同じネットワークにつながっているか確認する
## この資料にない質問
→ ICT支援員(来校日:火・木)または情報担当の先生へ
作り方②:Gemに指示文を書く
指示文でいちばん大切なのは「資料にないことは答えない」と書くことです。これがないと、Gemはそれらしい手順を推測で答えてしまいます。
作り方は次のとおりです。
- Geminiを開き、「Gemマネージャー」から「新しいGem」を選ぶ
- 名前を付ける(例:「ICTこまったとき相談室」)
- 「カスタム指示」に下の指示文を貼り付ける
- 「知識」にFAQ資料のGoogleドキュメントを追加する
- 右側のプレビューで質問してみて、保存する
(メニュー名は画面の更新で変わることがあります)
サンプルの指示文です。
あなたは「さくら小学校」の先生向けICT相談窓口です。
# 役割
- 先生からの端末・アプリ・授業でのICT活用に関する質問に答えます。
- 回答は必ず、添付の「ICTよくある質問」資料にもとづいてください。
# 答え方
- まず「どの端末で、何が起きているか」を確認してから答えます。
- 手順は番号付きで、1ステップずつ短く書きます。
- 専門用語はなるべく使わず、使うときは一言説明を添えます。
- 授業中に読むことを想定し、結論を最初に書きます。
# 守ること
- 資料に書かれていないことは推測で答えず、「資料にはありません」と伝え、ICT支援員または情報担当の先生への連絡を勧めてください。
- 設定の変更やアカウントのリセットなど、管理者だけが行える作業は手順を案内せず、担当者へつないでください。
- 子どもの名前・ID・パスワードなどの個人情報が入力されたら、入力しないよう優しく伝えてください。
試しに「電子黒板の音が出ない」という、資料にない質問をしてみてください。推測で答えずに担当者へつなぐなら成功です。
先生に届ける:Classroomで共有する
作ったGemは、Google Classroomを通じて先生に配れます。先生用のクラス(例:「職員室ICT」)を作っておくと、お知らせもまとめて置けて便利です。手順はGoogleの公式ヘルプにまとまっています。
2026年10月の更新で、管理者は共有できる範囲を「信頼できるドメイン」などで細かく決められるようになりました(Workspace Updates)。共有がうまくいかないときは、この設定を教育委員会に確認してもらうとよいでしょう。
運用で気をつけたこと
作って終わりではなく、資料を育て続けることが大切です。
- 個人情報は入れない:資料にも質問にも、子どもの名前やIDを入れないルールを最初に共有する
- 資料の更新担当を決める:端末の入れ替えやアプリの更新のたびに、FAQも直す
- 版と日付を書く:「第1版(2026年10月)」のように書いておくと、古い情報かどうか判断できる
- 聞かれたことをメモしてFAQに足す:Gemが「資料にない」と答えた質問こそ、次に追加すべき項目です
- 人につなぐ道を残す:AIで完結させず、困ったときの連絡先を必ず書いておく
うまくいかなかったこと
- 最初は資料を長い文章で書いていて、答えがぼんやりした
- 「資料にないことは答えない」を書かずにいたら、実際の画面と違う手順を答えた
まとめ
Gemを使えば、プログラミングなしで「校内マニュアルを読んで答える質問係」を作れます。ポイントは次の3つです。
- 資料は「1トピック=1見出し」で短く書く
- 指示文に「資料にないことは答えず、人につなぐ」と書く
- 質問をもとに資料を育て続ける
ICT支援員が学校にいない日でも、先生が少し安心して授業に臨めるようになればと思います。次回は、NotebookLMで「通知や規定を根拠付きで調べる」使い方を紹介する予定です。
